たまに現場に来て、現場を混乱させる経営者は嫌われる

先日、私のクライアントより「うちの経営者は現場に顔を出さないんですよね。そのくせ、リハビリや介護の業務や仕組みも全く知らないのに思いつきで色んな命令をしてくるので、みんなやる気を失っています」と聞いた(図1)。

このように医療や介護の現場において上司と部下の信頼関係が破綻している事例は多い。

このような職場は、離職率が高い、従業員のモチベーションが上がらない、良いサービスが提供できずに経営が行き詰まるなど何一つ良いことが起こらない。

図1 たまに現場に来て、現場を混乱させる経営者

上の立場にいる人が部下に影響力を与えるために必要な要素に信頼がある。

Edwin.P.Hollanderが提唱した信頼蓄積論は
「リーダーシップの有効性は、フォロワーから獲得した信頼の獲得の有無によって決まる」と説明している。

この理論は、肌感覚でもわかりやすい。

どれだけ言っていることが正論でも信頼できない人からの意見は受け入れがたい。

そもそも、信頼していない人から意見されると、多くの人は「お前が言うな」という感情を持つ。

信頼を獲得するためには
同調性

有能性
が必要である1)。

同調性
リーダーがフォロワーから認められるために集団の規範を守ること

集団の規範に対して忠実であることをフォロワーに示すことで信頼を獲得できる。

有能性
リーダーは,集団に課題達成できるような能力を示す

集団もつ課業の達成に積極的に貢献することで,さらなる信頼を蓄積していくことができる。

つまり、現場に全く顔を出さない人が現場における業務のルールを全く知らずにとんちんかんな指示を命令し、現場を混乱させることは同調性と有能性の要素を全く満たしていないため、信頼が全くない状況と言える。

経営者や管理職が部下に対して影響力を発揮するためには
1)現場の業務内容、課題、ルールを把握し、従業員と共通言語を用いて話せるようになる。これにより同調性を発揮することができる。

2)現場の課題に対して、従業員が納得や感心したりするような提案や行動を取る。これにより、有用性を発揮することができる。

経営者や管理者は
指示命令を出すことが仕事であるが
その前提条件として、現場を知ろうとする努力や現場に寄り添う姿勢が満たさなければ、とことん現場から嫌われると肝に銘じなければならない。

1)小野善生:リーダーシップ論における相互作用アプローチの展開,関西大学商学論集 第56巻第3号.p40-53(2011年12月)

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術・経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授