2026年度診療報酬/2027年度介護報酬改定の強化ポイント 医療機関退院後の早期リハビリの実現

地域包括ケアシステムの構築が進み、日本のヘルスケアシステムは大きく変化した。

その代表的なものが、「病院から在宅へ流れ」が市民権を得たことではないだろうか?

2010年以降に始まった地域包括ケアシステム推進の政策によって、「医療機関に長期間入院すること」や「看取りを病院で行うこと」が当たり前であった時代に終止符が打たれ、原則、全ての患者は在宅に復帰することを前提とする仕組みが導入された。

急性期・回復期・慢性期医療の機能を持つ医療機関に対しては在宅復帰を用いたアウトカム報酬が設定され、また、在宅復帰後の患者を受け入れる介護保険事業所や高齢者向けの住宅の整備も一気に進んだ。

このように在宅復帰のインフラの整備は進んだが、在宅復帰や在宅復帰後の生活を支えるプロセスには大きな課題が山積している。

その一つが、医療機関退院後のリハビリテーションサービスの遅延である。

急性期病院や回復期リハ病院を退院後、在宅リハビリテーションが必要な患者は多い。

しかし、退院後に在宅リハビリテーションの開始が遅れたために、入院中に獲得したADLが在宅復帰後に低下する例は多い。

介護給付分科会においても、同様の指摘されており2024年度診療報酬・介護報酬における課題として位置づけられている(図1)。

図1 訪問リハビリ・通所リハビリの利用開始が遅れるとADLの回復は乏しくなる

2024年度診療報酬・介護報酬改定では医療機関退院後の早期リハビリの実現の施策として次の項目が新設された。

①訪問リハビリ・通所リハビリの参加による退院時共同指導加算
訪問リハビリ・通所リハビリにおいて、「医療機関からの退院後に介護保険リハビリを行う際、リハビリ事業所の理学療法士等が医療機関の『退院前カンファレンス』に参加し、共同指導を行う」ことを新たに設ける【退院時共同指導加算】(1回600単位)で評価する。

②医療機関と介護保険リハビリ事業所のリハビリテーション計画書の共有
訪問リハビリ・通所リハビリにおいて、「入院中にリハビリを受けていた利用者に対し退院後の介護保険リハビリ計画を作成するに当たり、入院中に医療機関が作成したリハビリ実施計画書を入手し、内容を把握する」ことを義務付ける。

③入院中の主治医の意見をケアプランに反映をさせる
居宅介護支援、介護予防支援(訪問リハビリ、通所リハビリ)について、ケアマネジャーがケアプランに通所・訪問リハビリを位置づける際に意見を求める「主治の医師等」の中に「入院中の医療機関の医師」を含むことを明確化する。

④入院中の主治医から訪問リハビリの指示が出た場合は、診療未実施減算を適用しない
医療機関に入院し、リハビリテーションの提供を受けた利用者であって、当該医療機関から、当該利用者に関する情報の提供が行われている者においては、退院後一ヶ月以内に提供される訪問リハビリテーションに限り、診療未実施減算は適用されない。

これらの項目によってどれほど早期リハビリに効果があるかについて、今後、調査が行われ、次回の診療報酬・介護報酬改定に反映されることになる。

筆者は次回の診療報酬・介護報酬改定において早期リハビリを促進するために次のような改定が行われると推測する。

①機能強化型訪問リハビリの創設が検討されており、その運営基準の中に退院退所後の早期リハビリの開始が要件化される。

②回復期リハビリテーション病棟の運営基準に退院後の早期リハビリの開始が要件化される。

③通所リハビリの大規模が通常算定するための要件に退院退所後の早期リハビリの開始が追加される。

また、ケアプラン作成における課題も大きい。

ケアプラン作成時には看護と介護サービスの導入が第一に検討される傾向が強い。

これは疾患の予防や生活再建が第一に考えている介護支援専門員が多いことが原因と考える。

逆に言えば、リハビリテーションが軽視されていると言っても過言ではない。

様々な加算要件に早期リハビリを導入しても、ケアプラン作成におけるリハビリテーション前置主義が浸透しなければ、早期リハビリの実現は困難とみる。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術・経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授