経営者ー管理職において理念が共有できなければ、その組織は崩壊する

医療機関や介護事業所の経営や運営が行き詰まっているところは多い。

筆者が全国でコンサルティングやセミナー講演をしていると、経営や運営に関する相談を受けることが多い。

その中でも、経営者と従業員の思いが「ずれている」ことに対する相談が多い。

理念やビジョンが経営者と従業員で共有されていないことにより、様々な軋轢が生じている事例が散見する。

しかし、現実的に経営者の理念やビジョンを全従業員に共有させることは難しい。

近年は、医療・介護分野は人材不足となっており、採用ハードルが下がっている傾向がある。

そのため、理念やビジョンの共有を採用の絶対条件にすることができない状況となっている。

理念やビジョンの共有よりも採用数に重きを置くほうが、人材不足を解消することができるからだ。

したがって、今の医療・介護現場は採用不足を解消することが重視されており、理念やビジョンを共有することが軽視されている状況と言える。

それでは、このような状況においてはどのようにマネジメントをしていけばよいのだろうか?

私は、経営者や管理者についてこのようにアドバイスをしている。

「経営者と管理職において理念・ビジョンの共有を第一に目指してください。それが出来ていれば、チーム全体として大きく揺らぐことはありません。しかし、経営者と管理職が理念・ビジョンを共有できなければ、一瞬で組織は崩壊に向かいます。まずは、経営者と管理者はコミュニケーションを密にして、そして、時に理念やビジョンが共有できない場合は、管理職の配置変えも必要となります」

経営者と管理者で理念やビジョンが共有されていれば、全従業員においても大きく理念やビジョンから外れた行動は生じにくい。

しかし、経営者や経営幹部は経済的観念については強く管理職に指導することが多いが、理念やビジョンの共有については怠っている人が多い。

また、理念やビジョンを共有することで管理職が離職することを恐れるため、理念やビジョンを共有を諦めている経営者すらいる。

しかし、経済優先・理念軽視は必ず甚大な医療・介護過誤や不正を生じさせる。

今一度、経営者と管理者で理念やビジョンが共有を真剣に考えていただきたい。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
あずま整形外科リハビリテーションクリニック
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

 

 

 

 

 

 

2020年度診療報酬改定 地域包括ケア病棟の新モデルが提示された

2020年度診療報酬改定の内容が明らかになった。

今回は、地域包括ケア病棟について解説をしたい。

2014年度診療報酬改定により新設された地域包括ケア病棟は、新設後、爆発的に増加し日本の中核をなす病床に変化しつつある。

重症患者や医師等のスタッフの数を確保できない急性期病棟や稼働率の低い回復期リハビリテーション病棟などが地域包括ケア病棟に移行したケースが多い。

また、公的病棟も地域包括ケア病棟に参入したことが病棟増加に影響している。

このように急激に増えた地域包括ケア病棟であるが課題も多かった。

最大の課題は、住み慣れた地域に住み続けるという理念を実現するための病棟であるにもかからず、地域からの入院してくる患者の数が少なく、急性期病院からの入院が多いというものだ。

以前の診療報酬改定より、この課題について議論されていたが2020年度診療報酬改定においても、地域包括ケア病棟の新しい形が提示された(図)。

 

2018年度診療報酬改定にて設定された項目の全てが厳格化されている。

一言で言えば、地域から入院の受け入れ、地域医療や介護サービスの展開をより一層求めるというものである。

地域包括ケア病棟は文字通り地域との関係性を重視した運用が重視される内容になっている。

地域包括ケア病棟は急性期に依存した病棟運営から脱却し、地域との関係性を深めていくことが重要である。

地域との関係性を深めるためには、地域のニーズと自社の経営資源のマッチングを考える必要がある。

地域包括ケア病棟は
緩和ケア
リハビリテーション
レスパイト
慢性疾患治療
整形外科手術
など幅の広い活用ができる。

自社の経営資源で、どのサービスを重点的に展開するべきかを今一度考えるべきである。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
あずま整形外科リハビリテーションクリニック
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

2020年1月24日(金)に岐阜県理学療法士協会主催のイベントにて高木綾一がセラピスト向けのキャリアデザインセミナーの講師を担当いたしました

2020年1月24日(金)に岐阜県理学療法士協会主催のイベントにて株式会社Work Shift代表取締役 高木綾一がセラピスト向けのキャリアデザインセミナーの講師を担当いたしました。

会場には100名近くの参加者をいただきました。

このセミナーでは
セラピストになぜキャリアデザインが必要であるのか?
キャリアデザインの原理原則
キャリアデザインの実践方法
などを実例を交えながらご解説をさせていただきました。

このセミナーが終わった後には多くの参加者よりセミナーに関する感想やキャリアに関する悩みのメールをいただきました。

また、セミナーに参加した現在、高校生の方からもメールをいただきました。

この高校生は今年4月より大学に進学し理学療法を専攻するとのことで、大学に入学する前に心構えを知りたかったとのことでした。

とてつもなく意識の高い高校生がいると感心いたしました。

本セミナーを通じてセラピストのキャリアデザインは喫緊の課題であることを改め認識いたしました。

今後も、キャリアデザインに関する良質なコンテンツを提供できるよう精進してまいります。

キャリアデザインや組織マネジメントに関するセミナー講師の依頼は随時受け付けております。

弊社ホームページよりお気軽にお問い合わせください。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
あずま整形外科リハビリテーションクリニック
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

リハビリテーション部門の戦略を選択する時のコツ!!

組織は戦略を選択しなければ、生存し続けることができない。

今日、組織を取り巻く外部環境は急速に変化している。

リハビリテーション部門という組織も例外ではない。

急速な外部環境変化としては診療報酬改定、介護報酬改定、人口動態、労働者政策などが代表的なものである。

外部環境の変化に組織が適応しなければ、外部環境変化の波に飲まれて事業運営は困難となる。

このようは背景からリハビリテーション部門は常に戦略的な事業運営が必要となる。

しかし、多くのリハビリテーション部門は戦略の選択に迷うことが多い。

例えば、
外来リハビリだけを継続するか?
通所リハビリを開始するか?

急性病棟を継続するか?
急性病棟を縮小して地域包括ケア病棟を開始するか?

新人採用をやめるか
新人採用を積極的に行うか?

など戦略の選択に迷うことがある。

このような戦略を選択する時のコツは次のようなものである。

「失敗をしてもどちらが許容できるリスクであるか」を考えることである。

許容できるリスクとは「組織の価値観や経営資源に基づき受け入れられるリスク」のことである。

例えば、通所リハビリを開始しても、「地域の競合他社や後発組であることから利用者が集まらないリスク」があったとする。

しかし、

通所リハビリで使用するスペースはもともと法人で所有していた不動産であり、新規投資の必要性がないこと

集客が集まらず通所リハビリを辞めることになってもスタッフは外来リハビリや訪問リハビリで仕事を継続することができること

などの条件があれば、通所リハビリ開始のリスクは「許容できるリスク」となる。

戦略には必ずリスクが伴う。

そして,リスクを取らなければ外部環境への適応も難しいことも事実である。

問題はリスクの分析であり、許容できるリスクの判断が重要と言える。

常に許容できるリスクに基づいた戦略の意思決定を心掛けていただきたい。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
あずま整形外科リハビリテーションクリニック
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
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認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
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修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

今後の診療報酬改定・介護報酬改定に関するトレンドを箇条書きにした

2020年度診療報酬改定、2021年度介護報酬改定におけるトレンドや今後のヘルスケアビジネスの方向性を箇条書きにしました。

  • 急性期病棟  在宅(自宅)への移行率
    入退院支援加算・退院前訪問指導料・退院時共同指導料など急性期病院と在宅サービスの連携を強化する動きにより急性期から在宅(自宅)への復帰が推進される
  • 回復期リハビリ病棟 包括化&在宅支援
    7単位以上のレセプト請求が返戻・査定されていることやFIM実績指数を満たさないことによる単位数の包括化の流れから今後、回復リハビリ病棟そのものの包括化が検討される。
  • 老人保健施設 超強化型を超える施設基準
    現在、5類型の老人保健施設の下位レベルである「その他」「基本型」が廃止され在宅復帰が標準化される可能性が高い。
  • 疾患別リハビリ  施設基準に応じた算定基準日数
    リハビリテーション医療費の削減策として、脳血管及び運動器リハビリの算定制限が検討される。例:施設基準に応じた算定日数の設定・外来リハアウトカムの検討
  • 通所リハビリ  在宅回復期に応じた報酬&利用日数
    リハマネ加算Ⅱ以上や社会参加支援加算の算定内容に応じたアウトカム評価や短期集中リハビリの新類型などが検討され、通所リハビリの在宅回復期としての役割が期待される
  • 訪問看護  重度化対応の評価推進
    理学療法士等の訪問を中心とする事業所へのペナルティー(加算不可等)が生じ、訪問看護の重度化路線が強化される。
    一方、機能強化型訪問看護は条件緩和され、重度化への取り組みを促す。
  • 通所介護  ADL改善&栄養改善&重度化対応
    要介護者の最後の砦としての機能が期待される。具体的にはADLと栄養状態を維持向上させ、特別養護老人ホーム等への入所を抑制することが期待される。
    重度者対応型の通所介護が評価される傾向が強くなり、リハビリ特化型通所介護は斜陽となるため、経営上の対応が必要となる。
  • 外来リハビリ  外来リハアウトカム
    入院医療だけにアウトカムがあることが不公平であるとの意見があり、外来リハのアウトカムが検討されているが実施をするのは限定的になる可能性が高い。
  • 公的災害保険  地震・台風等の甚大な災害時の保険
    災害が多い日本において被災後の生活支援のために医療的・社会的リハビリテーションが必要であり、今後公的災害保険が検討される可能性がある。
  • 混合介護  介護保険サービス時に他のサービス実施
    介護保険サービス中に介護保険外サービスを提供することが解禁される可能性がある。東京都豊島区における混合介護モデル事業も大きな問題ないと言われている。ただし、混合サービスの導入においては介護支援専門員のマネジメントが必要とされる可能性が高い。
  • 保険外リハビリ  完全自費のリハビリテーションサービス
    地域包括ケアシステムでは、民間のサービスの活用も促しておりリハビリテーションも例外ではない。健康増進、疾患予防という観点では自費サービスは法律上問題ないため、今後も自費リハビリテーション市場は拡大していく。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
あずま整形外科リハビリテーションクリニック
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授