いまさら聞けない介護報酬の仕組み

1.介護報酬とは
各介護サービス費用の額は、厚生労働大臣の定める基準に基づいて算定される。 厚生労働大臣が介護報酬の算定基準を定めてようとする時は、あらかじめ社会保障審議会の意見を聞かなければならないルールになっている。
サービスを提供した事業者・施設がそのサービスの対価として保険者である市町村から報酬として支払いをうけるため、介護報酬と呼ばれる。

2.介護報酬の算定
介護給付単位数表に各サービス・施設などに応じて定められた単位数に、1単位の単価をかけて金額に換算する。
基本は10円であるが、地域により差が設けられている。
ただし、居宅療養管理指導、福祉用具貸与に関しては地域差がなく一律で10円となっている。 25d00b14f2311940445f6b18901e7d39_s 3.介護報酬請求の手続き
現物給付の請求では、事業者、施設、総合事業の指定事業者や受託者は、サービスを提供した月の翌月10日までに事業所や施設所在地の国民健康保険団体連合会(国保連)に明細書(レセプト)を提出しなければならない。
支払いは、請求月の翌月末に行われる。
したがって、サービス提供から二か月遅れで介護報酬が支払われることになる。

4.介護給付費審査委員会
国保連では、介護給付審査委員会を設置しており、請求された内容を公平に審査する。
この委員会は、介護給付等対象サービス担当者、市町村、公益の同数の代表からなる三者構成である。
委員は国民健康保険団体連合会が委嘱するが、サービス担当者と市町村の代表者は、それぞれの関係団体から推薦され、委員の任期は2年である。

5.介護報酬請求の時効
被保険者が保険給付を受ける権利または、事業者・施設が法定代理受領により介護報酬を受ける権利の消滅時効は2年である。
2年を超えると、被保険者が償還払いで給付を受けることや事業者が支払いを受ける権利を失うことになる。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
あずま整形外科リハビリテーションクリニック
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

PT・OT・ST管理職は要注意!「君は将来どうしたいの?」という質問はやめておこう!

うちのセラピストは目標もなく、困っています
面談でセラピストのやりたいことを聞くのですが、ちゃんとした返事が来ません
セラピストにやりたいことが本当にあるのかどうかわかりません
など・・・で悩んでいる理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の管理職は多い。

この種の悩みは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の管理職に「セラピストとして働いている人間は、セラピストとして目標があることが当たり前である」という前提条件があるために生じる。

ここに大きな誤りがある。

筆者が学生教育に携わり、キャリアコンサルタントとして多くの人に接してきて分かったことは、「セラピスとして目標を持っている人など圧倒的に少ない」という事である。

別の言い方をすれば、「セラピストとして目標を持っている人はかなりのレアケース」であると言うことである。

なぜならば、多くの人は「セラピストになることが目標であったために、セラピストになった後の目標など真剣に考えることは少ない」からだ。

したがって、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の管理職が部下に向かって「君は将来何がしたいのだ?」「あなたの目標を教えてくれ」「やりたいことを早く見つけなさい」という指導は、何の意味も持たない。

管理職がやるべき仕事は、「セラピストの目標設定の支援」である。

つまり、目標をセラピストが自己決定できるまでの支援をすることが管理職の仕事であり、部下から「目標をヒアリングすること」は仕事ではない。

人間がキャリアにおいて目標を設定するためには「自己概念」「価値観」「キャリアアンカー」を研ぎ澄ます必要がある。

これらの研ぎ澄まし方に関しては以下の記事を参考にして欲しい。

スーパー理論「自己概念」

「人」なぜ働くのだろうか?

部下に目標ややりたいことを質問ばかりしている人は是非、目標設定の支援が管理職の仕事である事を再認識して欲しい。

投稿者
高木綾一

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関西医療大学保健医療学部 客員准教授

PT・OT・STの転職戦略~学び重視型転職か、価値提供型転職か~

一昔前に比べ、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の転職は全く珍しいことではなくなった。

30代半ばまでに複数の職場を経験している人も少なくはない。

転職が一般的なことになっているのは
一つのところで働き続けるという価値観がなくなった
転職を斡旋するエージェント会社が多数存在している
SNSなどで他人の転職事情を知り転職に感化される機会が多い
などが原因と考えられる

ほとんどの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が転職する際に拘ってる事柄は「今の職場の給与より高い職場への転職」である。

簡単に言えば、給与を上げるために転職を考えるということである。

しかし、給与を上げることだけを目的に転職先を選んだ人がその後転職先職場でパフォーマンスが下がり、結局、退職するという事例を散見する。

実は転職には二種類の転職がある。

学び重視型転職
転職先職場から多くの知識や経験を学ぶことができ、自分自身のスキルアップが実現できる転職である。
この場合、学ぶことが主な目的であるため転職先組織に対する貢献には時間がかかるため高い給与をもらうことは難しい。

価値創出型転職
自分自身の知識や経験を転職先組織に提供し、その組織のサービスや売上げ向上に寄与する転職である。
この場合、転職先組織に対する価値提供ができるため給与に関して交渉する事も可能であり、高い給与をもらえる可能性が高い。

つまり、現状より高い給与をもらうためには価値創出型転職でなければ難しいのだ。

価値を提供できずに高い給与をもらうことになれば、当然、職場での評価は低くなり様々な面での処遇が厳しくなる。

給与を上げるために転職を行うことにはリスクがあることを認識するべきである。

転職を考えている人は自分がどちらの転職をしようとしているのかを冷静に考えてほしい。

投稿者
高木綾一

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セラピストの働き方のヒント ソーシャルワーク

ソーシャルワークとは 「生活をする上で何らかの困難を抱えている人の多様なニーズを把握して、社会資源を活用し、援助する専門的な対人援助技術」 である。

ソーシャルワークの対象は、ミクロ・メゾ・マクロに分かれる。

ミクロ・ソーシャルワーク
個人面接を通して、課題やニーズを把握し、適切なサービスを調整し、提供する。
主な手法は面接となる。
面接を通じて、課題とニーズをとらえ、利用者が自分自身の課題を明確に把握し、課題解決に向けて自己決定できるように支援していく。
受容的・非審判的な態度・秘密保持・人権尊重・援助計画作成能力が求められる。
例:カウンセリング・面談・個別リハビリテーション

メゾ・ソーシャルワーク
集団や組織の構成メンバーに対して支援を提供する。 メンバー同士が相互関係を発展させ、課題解決に向けて支援する。
集団への強制をなくすために、「離脱できる自由の保障」が重要である。
他のメンバーと接することで、自分を客観的に見るようになり、自身の問題に気づくことや他者への共感により孤立状態から脱却できる。
また、集団にいると役割や多様な交流が発生し、社会の一員としての活性化につながる。
例:通所介護・通所リハビリ・患者の会・地域グループ

マクロ・ソーシャルワーク
地域社会を対象として、生活をするうえで困難を抱えている人の背景にある社会問題に着目し、個人を支援していく。
社会に対するサービス供給側の課題も考え、地域社会全体に働き掛けていくことになる。
例:NPO・社会福祉協議会・行政・一般社団法人・株式会社 193119 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の職域拡大やキャリアデザインを考えるうえでも、ソーシャルワークの視点は有用である。

自身の持っている知識や経験をどのような場で提供し、社会の役に立てていくのか?

そして、どのようにして収入を得ていくのか?

これらについて、ソーシャルワークのモデルを用いて、考えるとヒントが得られるかもしれない。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
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認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

なぜ、セラピストのキャリアデザインが必要なのか?

セラピストを取り巻く環境は、近年非常に厳しいものとなっている。

かつての、比較的安定した雇用に変化が表れている。

時給の低下、生産性向上への期待、在宅医療へのシフト、非正規雇用の増加などの環境変化により、多くのセラピストが今後の仕事に対して不安を感じている。

日本全体の労働力の1/3が非正規雇用であることを考えると、医療・介護に関しても非正規雇用が増えることは致し方ありない。

さらに、理学療法士は年間1万人、作業療法士は年間5千人増加し、過剰供給による「資格の価値」の低下も懸念される状況である。

このような背景から、現代に働く理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の多くは、5年後の自分の生活を想像することすら難しくなっている。

安定した一つの組織でキャリアを発展させることができるセラピストは減少し、多くの人が何度も職場や仕事内容を変えることになる時代が到来している。

2050年に向けて労働環境は益々、流動的となり、キャリアの主体は組織から個人へシフトしていく。

2050年に向けて働くセラピストは、「環境変化が著しい仕事人生をいかに乗り越えるか」という技術が必要である。

まさに、自分の人生をデザインする力がこれからのセラピストには求められている。 20150416230254592 大病院や正規雇用のセラピストでさえ、自分の将来に向けてのキャリアの道筋を明確に定めることが難しい現状である。

キャリアデザインの意識なしに仕事をするのは、地図や羅針盤を持たずに砂漠を歩くのと同じである。

自分の人生をどのようにデザインするか? 真剣に考えなければならない時代が到来している。

 

投稿者
高木綾一

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