2022年度診療報酬改定 回復期医療の変更ポイント

今回、地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟はリハビリテーションサービスに直接的に影響する改定はなく、病棟マネジメントや連携に関する改定内容となった。

その中でも以下の点が、重要な改定内容だったと言える。

地域包括ケア病棟
入院料・入院医療管理料 3・4にも在宅復帰率7割の要件を新設され、満たさない場合は入院料が減算となる。

入院料・入院医療管理料3.4ではリハビリテーション職種も少なく、在宅復帰に取り組んでいない病棟があり、在宅復帰率7割の要件は相当厳しいものと予想される。

また、全て入院料で「自宅等から入院した患者が2割以上」の要件が設定された。

これは、自院の急性期病床からの受け皿機能に特化する病床を規制するものであり、地域包括ケア病棟として地域からの入院受け入れにシフトするように促すものである。

特に200床以上の医療機関の地域包括ケア病棟は、地域からの受け入れが乏しい傾向があるため、今後、ベッドコントロールに大きな課題が生じたと言える。

今回の改定を鑑みると、次期2024年度ではさらに地域包括ケア病棟の本来の役割であるサブアキュートや在宅復帰の強化が今後も行われると予想される。

回復期リハビリテーション病棟
今回はFIMの実績指数や施設基準に大きな変更はなかった。

今回、唯一大きな変更としては入院料1 ~ 4の重症患者割合が厳しくなったことである。

入院料1.2は重症度割合4割以上

入院料3.4重症度割合3割以上

に変更が行われた。

これにより、急性期と回復期の連携が重要となってくる。

回復期リハ病棟としては、より早期に急性期より患者の転院を促す必要がある。

しかし、急性期が回復期リハ病棟に早期に患者を転院させるためにはより状態を安定化させる必要があると言える。

また、急性期としてもどのような状態であれば回復期リハビリ病棟が受け入れることができるかの判断が重要となってくる。

したがって、回復期リハ病棟の重症度が上がることは、急性期の医療やリハビリテーションの質に影響すると言える。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術・経営管理学)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

 

2022年度診療報酬改定 急性期医療の変更ポイント

2022年度診療報酬改定の個別改定項目が明らかになった。

今回は急性期医療について主な改定項目について解説する。

急性期
重症度、医療・看護必要度において
看護必要度のA 項目から「心電図モニター管理」を削除され
「点滴ライン同時3本管理」が「注射薬剤 3種類以上管理」となった。

心電図モニターが外されたことにより、心電図モニターに頼った運用をしていた病棟にとっては厳しい改定となった。以前より、心電図モニターによる管理が医学的に必要のない患者に対して、心電図モニターを装着している事例が散見しており、ついにメスが入ったと言える。

メディカル・データ・ビジョン社によると心電図モニターの削減により、重症度、医療・看護必要度は平均4.2%減少、最大8.89%減少、最小0.03%減少するとのことである。
参考サイト→ https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000024.000089368.html

心不全・呼吸器疾患・誤嚥性肺炎などを中心に見ている内科系の病院にとっては苦しい改定となったと言える。

「点滴ライン同時3本管理」が「注射薬剤 3種類以上管理」に変更された点であるが「点滴同時3本以上の管理」に該当する患者のうち、使用薬剤数が2種類以下の 患者が存在することが判明したため、整合性が合わないとして、点滴ラインの評価が削除された。

また、手術や救急医療など高度かつ専門的な医療を提供している病院が算定できる「急性期充実体制加算 (460 ~ 180点)」を新設された。(ただし、総合入院体制加算との併算定は不可)

急性期充実体制
手術や救急医療等の高度専門的医療・急性期医療の提供体制を十分に確保する急性期病棟について評価する加算

一日につき
7日以内:460点
8-11日:250点
12-14日:180点
が加算できる。

施設基準
急性期一般1を算定する病院
高度専門的医療・救急医療にかかる体制と実績を有すること(ICU等にユニット設置や手術・救急搬送受け入れ件数が一定以上など)
入院患者の急変徴候をとらえて対応する体制(RRS:Rapid Response System)の導入

RSSとは、院内心停止になる前に早期に患者の急変に気付き、心停止になる前に介入することで、予後を改善するシステムである(下図)。

院内急変は高齢化患者が多い急性期では大きな問題となっているため、RSSが導入された。

 

しかし、【急性期充実体制加算】は【総合入院体制加算】との併算定が認めらない。

急性期充実体制加算や総合入院体制加算は「手術実績」や「救急搬送受け入れ実績」は共通している。

ただ、総合入院体制加算は「精神科、小児医療を含めた診療科要件や分娩件数要件などがあり、総合的な機能を持つ地域の基幹病院」を評価するものである。

一方で急性期充実体制加算は「ICU等の設置などが求められ、高度急性期医療を提供する病院」とより急性期寄りの医療機能を評価するものになる。

今回、急性期充実体制加算が急性期に認められたことにより総合入院体制加算も含め、相当急性期の評価が進んだと考えらる。

投稿者
高木綾一

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2022年度診療報酬改定 標準的算定日数を超えた場合、月1回のFIMの導入による懸念

2022年度診療報酬改定では、疾患別リハビリテーションに対する大きな改定はなかったが、気になる制度が導入されることになった。

疾患別リハビリテーションにおいて標準的算定日数を超えてリハビリテーションを行う場合において、月1回以上のFIMの測定が要件化された(下図)。

これは、治療を継続することにより状態の改善が医学的に判断される患者が対象となっている。

回復期リハビリ病棟で実施されているアウトカム評価が特に標準的算定日数を超えた患者が多い外来リハビリにおいて実施されたと言えるだろう。

これは中医協の議論において「疾患別リハビリの質の高いリハビリテーションの推進」の観点から、標準的算定日数越の患者のリハビリテーションの効果に疑念が持たれた他ならない。

この制度が導入された真の目的は2つ考えられる。

1)将来的に期限を超えての改善目的のリハビリテーションでは改善割合が一定以上とする制度を導入したい

2)標準的算定日数を超え、状態の改善が期待できると判断されない場合においても、1月に13単位まで疾患別リハビリテーションを算定できるが、将来的にはこの維持期リハビリテーションも制限をかけたい

今回は上記の目的にのためのデータ収集事業としての側面が強いと考えられる。

また、FIMだけの計測で本当にリハビリテーションの効果を測ることができるのか?という問題が残る。

特に、整形疾患、心疾患、呼吸器疾患ではADLは自立しているが、生活の質の低下が顕在化しているということが多い。

今回の改定では、疾患別リハビリテーションのデータ提出加算も導入されており、リハビリテーションのサービスの中身に関するデータ収集が本格的に始まる。

以上のようなことを踏まえると次回の改定では、疾患別リハビリテーションに大きな制限がかかる可能性が高い。

投稿者
高木綾一

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2022年度診療報酬改定 かかりつけの医療機関の定義が明確化された機能強化加算の新要件

かかりつけ医機能を評価するために、2018年度の前回診療報酬改定で新設された
機能強化加算の要件変更が2022年度診療報酬改定にて行われた。

現在の機能強化加算の内容は次の通りである。

目的
かかりつけ医機能を持つ診療所を評価する

点数
初診料の算定時に80点の加算が可能である

対象患者
初診料を算定する患者

届出要件
次のいずれかの届出を行っていること
① 地域包括診療加算
② 地域包括診療料
③ 小児かかりつけ診療料
④ 在宅時医学総合管理料(在宅療養支援診療所に限る)
⑤ 施設入居時等医学総合管理料(在宅療養支援診療所に限る)

このように加算や管理料を届けていれば自動的に算定できる加算であるため、「かかりつけ機能の強化」という実効性がない加算であると業界内では批判されていた。

そのため、2022年度診療報酬改定では機能強化加算の要件が次のように強化された(下図)。

 

これらの詳細な内容について自院のホームページに明記することも求められている。

特に、他の医療機関における医薬品の把握や診療時間外の緊急対応については在宅医療を本格的に行っていない診療所にとってはハードルが高いものとなる。

また、上記の要件に加えて
直近1年間で「地域包括診療加算2の算定患者3人以上」「往診料・訪問診療料の算定回数合計が3人以上」のいずれを満たすこととの実績基準や常勤医師による「警察医との協力」「乳幼児健診の実施」「予防接種の実施」「地域ケア会議への出席」も要件化された。

今回の改定では、かかりつけ医として求められる具体的な機能が明記されたと考えられる。

特に、新型コロナの影響により在宅診療や予防接種の実施は重要なテーマとなっているため訪問診療料や予防接種の要件が設けられた。

高齢化が伸展する日本では診療所の役割の強化は必須である。

今回の機能強化加算の要件の厳格化はかかりつけ医としての真価が問われる時代に入ったことを示唆すると言えよう。

投稿者
高木綾一

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自分自身が納得するまで患者・利用者に関わりたい症候群

 

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の中には、「自分自身が納得するまで患者・利用者に関わりたい」という人がいる。

このような人は、職人志向が強いあるいは患者や利用者への共感性が強いことが多い。

確かに、職人気質・クライアントへの共感はセラピストにとって必要な要素であるが、それは所属している組織の中におけるルール内において発揮するべき能力と言える。

殆どの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は月給制で働いている。

一か月あたりに必要となる人件費が固定されていることから、利益を出すためには一定の売り上げが求められる。

そのため、組織は管理業務、カンファレンス等の医療の質の維持・向上に必要な事柄は実施した上で、売り上げの指標となる単位数、加算、稼働率を設定する。

つまり、「セラピストは自分の給与を踏まえた上で利益が出るように働くこと」が組織に所属するセラピストには求められる。

しかし、現場では「患者や利用者のため・・・」という殺し文句で、特定の患者にサービスを提供することや、レセプト請求の対象にならない行為を実施するセラピストがいる(下図)。

※転載禁止 自己中心的なセラピスト

このようなセラピストは自分自身が組織に所属していることの意味を忘れている。

どうしても、自分が行いたいリハビリテーションを実施したいのであれば、起業して好きなようにやればよい。

しかし、組織に所属している以上は組織のルールに従うのが義務である。

セラピストである前に、社会人なんだから。

投稿者
高木綾一

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イラスト提供
福山真樹
メディカルアナトミーイラストレーター

医療・介護等の現場を、医療職種の胸の内まで分かりやすくイラストで伝える。
臨床で勤務する理学療法士だからこそ描ける作品を医療関係者等へ提供し、書籍・学会・福祉機器紹介PV等、様々な場面で用いられている。
福之画
https://fukunoe.com/
リハアート
https://workshift-online.com/rehaart/